「ウェブを変える10の破壊的トレンド」
渡辺弘美氏の「ウェブを変える10の破壊的トレンド」を読んだ。
今どのようなサービスがウェブ上で展開され、どのような方向に進もうとしているのかを俯瞰するのに適した一冊。10のトレンドは以下。
1.Direct ユーザーを直接つかみ、ロックイン 2.Free 「潤沢経済」時代のビジネス 3.Crowdsourcing みんなの知恵を利用する 4.Presence リアルタイムな情報を生かす 5.Web-Oriented すべてのサービスをウェブ上で提供できるか 6.Virtual and Real 「仮想」は「非現実」にあらず 7.Videos 映画やTVの行く末は 8.Interface よりわかりやすく、使いやすく 9.Search ポストグーグルの潮流 10.Semantic Technology 意味を理解し始める時代へ
本書を読んで感じたことは技術的な差別化の重要性。本書で紹介されている10のトレンドそれぞれの分野で、新興企業が「自分がデファクト・スタンダードの座を占めようと」しのぎを削っている様子が伺える。
10のトレンドそれぞれに破壊力が備わっていることは間違いないと思うが、必ずしも技術的な差別化が期待できるトレンドばかりではないように思った。Crowdsourcingなどはウェブのきわめて強力な性質を形にした技術だとは思うが、技術的に差別化は図りにくいかもしれない。
差別化が図れないと、類似のサービスを展開する雲と沸く新興企業たちで溢れ返り、ビジネスとしてはやりにくくなるだろう。本書を読んでも類似のサービスがたくさん存在することがよくわかる。
一方、SearchやSemantic Technologyは技術色が強く、差別化に結びつけやすい分野のように思える。言語間の壁を解消する技術や、言語化できない画像等のデータと言語を結びつける技術の発展により、言語を越えてあらゆるデータを利用できる未来がくればすばらしいと思う。そういった技術は非常に高度なはずなので、技術のコモディティ化は簡単には起こらないと思う。
ウェブにつながっている者、つなげている物の双方に価値がある。
個人的には、いきなり「者」の価値に依存するのではなく、「物」の価値の向上により価値ある「者」を集めることができたときに、破壊的に世界が変わるのだと思う。