その数学が戦略を決める

職場の先輩の勧めで「その数学が戦略を決める」を読んだ。非常に面白い本でオススメ。

これからは世の中統計だと思う。ワインの価格予想、Web、医療、金融、映画、政府、製造業、あらゆる業種・業界に統計が入り込んでいる。

本書で紹介されている統計手法自体は目新しくなく、回帰分析やニューラルネットワークなどの枯れた技術。しかし、統計が対象とするデータが膨大に入手できる現代だからこそ、大きな力を発揮し始めている。私も画象信号処理を通じて統計とは深い付き合い。この技術を今後どのように展開応用するかについて多くの示唆を得ることができた。

統計は例えば以下の点で完全ではない。

  • モデルとなる線形一次結合式なり確率密度分布(正規分布べき分布)を仮定した上で、その分布を規定するパラメータを最適化するだけなので、モデルに綺麗に当てはまらない場合には有効性を欠く。
  • 扱う事象にもよるが、関連するパラメータ(確率変数)をすべてを組み込むことはほとんど不可能。

しかし、以上のような不完全性があってもなお、対象とする事象が以下の性質を持ち合わせるとき、統計理論は人間よりよっぽどよい解を導く、というのが紹介した書籍の主旨。人間はどうしても思い込みが強い生き物なので、客観性と冷徹さにおいて統計理論に敵わない。

  • 扱う変数の数に対して十分な量のデータがある
  • 事象と変数に相関がある

本書が面白いのは、そうした技術側面を語るのみでなく、様々な業界での実際の応用例と軋轢を語っている点にある。
軋轢、すなわち業界に統計的な手法を導入することに対する抵抗は、その業界で職人的に活躍している人たちから湧き上がる。
ここらへんの事情も面白い。詳細は是非本書でご確認ください。