大きく考えることの魔術

私はあまり自己啓発本は読んだことがなかったが、この本と出会えたことは幸運。
この本の初版は1970年だから、私が生まれるよりも10年近く前のこと。
しかし、内容はまったく色あせていない。名著とはそういうものだと思う。
この本の特徴は以下の通り。

  • 「大きく考えること」を具体的な実例を伴いながら推奨
  • 取り上げられている実例が普遍的な内容
  • テクニックではなく、人間の本質にスポットを当てている

人生において大きく成功するためには「人間の考え方が実世界に及ぼす影響」に対する理解が欠かせないと思う。
そして、本書はその理解の助けとなるエッセンスで満ちている。
特別なことが書かれているわけではない。以下に目次を引用するが、
基本的な内容過ぎて特に眼を引くものではないと感じる方が多いと思う。

第1章 成功できると信じよう 〜疑いを考えれば失敗する。勝利を考えれば成功する〜
第2章 弁解するのはやめなさい 〜失敗の理由を健康、能力、年齢、運のなさにするな〜
第3章 自信を持ちなさい 〜自信を持って行動すれば、自信のある考えが生まれる〜
第4章 大きく考えなさい 〜自分を過小評価せず、自信を持って積極的に考えよ〜
第5章 創造的に考えなさい 〜信念は想像力を解放し、はばたかせてくれる〜
第6章 自分が考えるとおりの人になる 〜あなたの価値を決めるのは、あなたの考え方しだいである〜
第7章 一流をめざしなさい 〜あなたの考え方、態度、個性は環境によってつくられる〜
第8章 正しい態度をとりなさい 〜成功の鍵は、熱意を持ち、サービス精神を忘れず、人から重要人物だと思わせること〜
第9章 人に好かれなさい 〜人から好かれる成功プログラム10の原則〜
第10章 行動する習慣をつけなさい 〜まず行動を起こせ。考えるだけでは何もできはしない〜
第11章 敗北を勝利に転じなさい 〜解決できる道は必ずあることを信じよう〜
第12章 目標を設定しなさい 〜計画をたて、目標を明確にして、一歩ずつ進んでいこう〜
第13章 リーダーらしく考えよ 〜人を動かす四つの原則〜

だが、本書を読むと、この基本的なことが自分にはできていないことがよくわかった。
この本に書かれているのは「真のリーダー」の言葉。
考え方の方向性のあるべき姿が、その方向に進むことの素晴らしさが、魔術的な説得力で語られている。
「そのように考え、行動できたら確かに人生は素晴らしいものになるだろう」と素直に思うことができた。
そして実際にそのような考え方に到達するための方法が具体的に示されている。
基本であればあるほど、それをできるようにする手引きは難しいと思う。
その意味で、本書は本当に素晴らしい。

珍しく買ってすぐ何度か読み返し、そしてこれからも何度も読み返すであろう本。
私の考え方に正しい軸を与えてくれたことを感謝。

その数学が戦略を決める

職場の先輩の勧めで「その数学が戦略を決める」を読んだ。非常に面白い本でオススメ。

これからは世の中統計だと思う。ワインの価格予想、Web、医療、金融、映画、政府、製造業、あらゆる業種・業界に統計が入り込んでいる。

本書で紹介されている統計手法自体は目新しくなく、回帰分析やニューラルネットワークなどの枯れた技術。しかし、統計が対象とするデータが膨大に入手できる現代だからこそ、大きな力を発揮し始めている。私も画象信号処理を通じて統計とは深い付き合い。この技術を今後どのように展開応用するかについて多くの示唆を得ることができた。

統計は例えば以下の点で完全ではない。

  • モデルとなる線形一次結合式なり確率密度分布(正規分布べき分布)を仮定した上で、その分布を規定するパラメータを最適化するだけなので、モデルに綺麗に当てはまらない場合には有効性を欠く。
  • 扱う事象にもよるが、関連するパラメータ(確率変数)をすべてを組み込むことはほとんど不可能。

しかし、以上のような不完全性があってもなお、対象とする事象が以下の性質を持ち合わせるとき、統計理論は人間よりよっぽどよい解を導く、というのが紹介した書籍の主旨。人間はどうしても思い込みが強い生き物なので、客観性と冷徹さにおいて統計理論に敵わない。

  • 扱う変数の数に対して十分な量のデータがある
  • 事象と変数に相関がある

本書が面白いのは、そうした技術側面を語るのみでなく、様々な業界での実際の応用例と軋轢を語っている点にある。
軋轢、すなわち業界に統計的な手法を導入することに対する抵抗は、その業界で職人的に活躍している人たちから湧き上がる。
ここらへんの事情も面白い。詳細は是非本書でご確認ください。

synergyのインストールメモ

2つのディスプレーに接続されたPC間(OSが異なってもOK)でマウスとキーボードを共有できるsynergyをインストールした。クリップボードも共有できるので、片方のPCでコピーしたテキストをもう一方のPCでペーストすることができて便利。

環境

インストール作業

http://makion.jpn.org/blog/C463992368/E221415285/index.htmlを参照しながらインストール。

共通
  1. synergyのダウンロード(今回はBinaries「1.3.1」をダウンロード)
  2. http://synergy2.sourceforge.net からMac用(synergy-1.3.1-1.OSX.tar.gz)とWindows用(SynergyInstaller-1.3.1.exe)をダウンロードする(オープンソース/フリーウェア)。
  3. 共有設定の確認
サーバー側(Macbook)
  • ダウンロードしたファイルを解凍
% gunzip synergy-1.3.1-1.OSX.tar.gz
% tar xvf synergy-1.3.1-1.OSX.tar
  • 設定ファイルsynergy.confをemacsなどのエディタで編集
# sample synergy configuration file
#
# comments begin with the # character and continue to the end of
# line.  comments may appear anywhere the syntax permits.

section: screens
# hosts name
# ネットワーク上でのコンピュータ名を記述(IP-addressでも可)
macbook.local:
windows:
end

section: links
# macbookの左側にwindowsがいる
#  macbookの左端にマウスカーソルを持って行くとサーバーマシンのマウスとキーボードで
#  Windowsマシンを操作
macbook.local:
left = windows

# windowsの右側にmacbookがいる
#  Windosマシンの右端にマウスカーソルを持って行くとサーバーマシンのマウスとキーボードで
#  macbookマシンを操作
windows:
right = macbook.local

end
  • synergysを/usr/local/binに移動(要rootパスワード)
% sudo cp synergys /usr/local/bin
  • synergy.confを/etcに移動(要rootパスワード)
% sudo cp synergy.conf /etc
  • ファイアウォールを利用している場合は24800のポートを空けてやる必要がある。今回は「すべての受信接続を許可」にしているので特に設定不要。(システム環境設定→セキュリティ→ファイアウォール、から確認)
  • 以下のコマンドでサーバープログラムを走らせる
% /usr/local/bin/synergys -c /etc/synergy.conf -n macbook.local -f
  • 毎回上記コマンドを打つのは面倒なので起動用アプリを作成する(AppleScriptを使ってダブルクリックで起動できるアプレットを作る)。
    1. アプリケーションフォルダ→AppleScript内のスクリプトエディタを開く
    2. 上のウィンドウに下記のスクリプトをペースト
      1. do shell script "/usr/local/bin/synergys -c /etc/synergy.conf -n $(hostname -s) -f"
    3. フォーマットをアプリケーションとして保存
    4. 作成したアプレットをダブルクリックで起動
      1. 動作確認と停止はアクティビティモニタを利用
クライアント側(Windows Vista)
  • ダウンロードしたSynergyInstaller-1.3.1.exeをダブルクリックして指示に従ってインストール
  • ファイアウォールの設定
    1. 「コントロールパネル→セキュリティ→WindowsファイアウォールWindowsファイアウォールによるプログラムの許可(タブは「例外」になっていること)」を開く
    2. 「ポートの追加」(名前:synergy ポート番号:24800)
    3. 念のため「プログラムの追加」でsynergyのアプリケーションを選択
  • synergyを起動したら「クライアント」を選び(デフォルト)、サーバとなるMacの名前(macbook.local)を入力してstartボタンをクリック
    • タスクトレイに常駐開始。タスクトレイのアイコンに稲妻マークが出ていれば同期中。タスクマネージャで動作確認と停止。

ローカルネットワーク内のMac LeopardとWindowsの接続

Mac OS X Leopard からローカルネットワーク上の Windows Vista / Windows XP に接続する方法のメモ書き。

環境

Mac側の設定

「システム環境設定」→「共有」において「ファイル共有」のチェックボックスにチェックを入れる。「オプション」から「SMBを使用してファイルやフォルダを共有」にチェックを入れて「完了」を押す。

Windows側の設定(XPの場合のみ)

Vistaに接続した際には特に設定は不要だったが、XPに接続しようとした場合には、設定をしないと接続できなかったのでメモを残す。

  1. ファイル共有をするためのフォルダを作成
    • 今回はデフォルトで用意されている「共有ドキュメント」の中に適当な名前(今回はshared)のフォルダを作成。
  2. 作成したフォルダの設定
    1. 作成したフォルダを右クリックしてプロパティを表示
    2. 共有タブを表示
    3. 「ネットワーク上でこのフォルダを共有する」と「ネットワーク ユーザーによるファイルの変更を許可する」にチェックを入れる
    4. 「OK」ボタンで終了
    5. フォルダに手のマークが現れ共有されていることが確認できる

接続手順

  1. Windows側のIPアドレスを確認
    • 「スタート」→「アクセサリ」→「コマンド プロンプト」を起動して、ipconfig と入力して return キーを押すとIP Address(192.168.0.2等)が表示されるのでメモしておく。
  2. MacからWindowsに接続
    1. Finderから「移動」→「サーバーへ接続...」をクリック。ウィンドウが出現。
    2. サーバアドレス欄に「smb://先ほどメモしたWindowsマシンのIP Address (ex. smb://192.168.0.2)」と入力して「接続」をクリック。
    3. 接続ユーザ名とパスワードをきかれるので、接続先のWindowsにログインする際のものを入力。
    4. マウントするボリュームをきかれる。Vistaではおそらくデフォルトでは「User」になっているのでそのまま選択。XPでは、事前に作成した共有フォルダ(shared)を選択。
    5. 以上。

金持ち父さん貧乏父さん

ロバート・キヨサキ氏と公認会計士シャロン・レクター女史の共著、「金持ち父さん貧乏父さん」を読んだ。実際の方法論よりも、よりマクロな視点で指針を示してくれる本だった。とてもためになった。

著者のロバート・キヨサキの実の父は本書における貧乏父さんだ。四年制大学を二年で卒業し博士号を取得、その後もさらに高度な教育を受けるためにスタンフォード、シカゴ、ノースウェスタンと三つの大学をはしご。どの大学でも成績優秀で授業料は奨学金でまかなった。一方の金持ち父さんは著者の友人のマイクの父親で、ハイスクールすら卒業していない。二人の父はどちらも生涯を通じてよく働いた。二人とも仕事はうまくいっていて収入も多かった。それなのに、貧乏父さんは死ぬまでお金に苦労をし、金持ち父さんはハワイで最も裕福な人間の一人になった。本書では、二人の父を対比しながら、金持ちになるための金持ち父さんの教えと著者の経験則と哲学について説いている。本書は「教えの書」と「実践の書」に分かれる。

教えの書

教えの書では金持ち父さんの六つの教えを説いている。

第一の教え:金持ちはお金のためには働かない

なぜ金持ちになれない人たちがお金のために働くのか。金持ち父さんは言う。「みんな自分の本当の気持ちを見つめず、お金がなくなったらどうしようと心配ばかりしている。そして、その恐怖に真正面から立ち向かおうとしないんだ。つまり、考えもせずに反応だけしている。頭を使うかわりに感情に任せて反応だけしているんだ。それで、いくらかお金を手にすると今度は、喜びと欲望、さらには欲張りの感情が出てくる。そして、またそれに流されるままに反応するんだ。考えもしないでね。」。金持ち父さんは続ける。「もし、お金がなかったらどうしようという恐怖に考え方を支配されなければ、その恐怖をなくすためにわずかな金を稼ごうと大急ぎで仕事を探しに行ったりせずに、『長い目で見て、仕事をすることがこの恐怖をなくすための最善の方法なのだろうか』と自分に問いかけるかもしれない。私に言わせれば、その疑問の応えはいつもノーだ。とくに、人間の一生を考えたらね。本当を言って、仕事をすることは長期的な問題に対する短期的な解決策でしかないんだ。」

これには思い当たる節がある。仕事で毎週行われるミーティングで何らかの成果を示す必要がある。入社間もない頃は、とにかくデータを出さなくてはという焦りに捕われ、「とにかく何でもいいからデータを集めよう」ということで明確な目的を持たずにデータを収集した。そうやって収集したデータに意味があるはずもなく、会議の場を混乱させてしまったことがあった。まさに考えもせずに反応してしまったのだ。一番大切なことは、「何のためにデータを取るのか」という目的をしっかりと考えることだ。データを集めているときの方が、せわしなく作業をしており、作業をしていることが「とにかく前進している」という錯覚をもたらしてくれるので楽だった。だが実際には前進などしていないかったのだ。時間を切られいているのに作業をしないことはかなりプレッシャーなのだが、きちんと頭を働かせて、目的をじっくりと明確化することが結局は近道だということを、多少時間はかかったが学ぶことができてよかったと思っている。以下、再び本書に話を戻す。

金持ち父さんの訓練の一環で、コンビニエンスストアでタダで働かされていた幼き日の著者とマイクは、自分たちで考えてビジネスを開始する。その店では売れ残った漫画雑誌の表紙を、小売りしなかった証拠にするために半分だけ切り取って、雑誌の本体は捨ててしまっていた。著者とマイクはこの漫画雑誌を転売しない約束で貰い受け、漫画図書館を運営した。10セントの入場料で二時間漫画が読み放題。著者は言う。漫画図書館を運営して得た一番の教訓は、自分が実際にその場にいなくてもその事業自体がお金を生み出してくれたことだと。お金が自分のために働いてくれたのだと。

第二の教え:お金の流れの読み方を学ぶ

著者は「金持ちになりたければ、お金について勉強しなければならない」ということを強調している。最も基本的なことは資産と負債の違いを学ぶことだ。金持ちは資産を手に入れる。中流以下の人たちは負債を手に入れ、資産だと思い込む。金持ち父さんは明快な言葉で資産と負債の違いを説明する。

  • 資産は私のポケットにお金を入れてくれる
  • 負債は私のポケットからお金をとっていく

金持ちになりたいなら、ただ「資産を買うこと」に生涯を捧げればいい。金持ちになれない人が必ずしも十分なお金を稼いでいないというわけではない。問題は彼らが資産ではなく、負債を買うために生涯を費やしていることにある。資産からのお金の流れと負債からのお金の流れは以下の図で単純に表現できる。

具体例として本書で示されているのは、貧乏人、中流、金持ちのお金の流れの図で、以下のようなものである。

著者が強調するのは「どうやってお金を稼ぐか」ではなく「お金をどう使うか」が重要だという点。お金を稼いだあとどうするか、人にそれをとられないようにするためにどうするか、それを長く持ち続けるにはどうしたらよいか、そのお金をどうやって自分のために働かせるかといったことを知らなければ、いくらお金を稼いでも無駄だという。たいていの人はキャッシュフロー(お金の流れ)を理解していないために、自分がお金に苦労している原因がわからない。「一生懸命に働くことはいいことだ」とだけ教えられてきたために、「自分のためにお金を働かせる」方法を知らない。そのために、必要以上に働き続けることになる。中流の人のお金の流れを、やや極端ではあるが若い夫婦という形で著者が説明している箇所を抜き出す。

一生懸命働く人たちの人生のパターンは決まっている。高い教育を受けた若い男女が結婚し、それまで一方が暮らしていた狭苦しい賃貸アパートでいっしょに生活を始める。二人は間もなく、一人で暮らしていた頃よりお金がかからないことに気付き、お金を貯め始める。
問題はアパートが狭すぎることだ。二人は家を買い、子どもを持つことを夢見てお金を貯める決心をする。一つの世帯に収入の道は二つ。二人は仕事に精を出す。
二人の収入が上がり始める。
収入が上がると、それにつれて支出も増える。
〜中略(累進課税で所得が持って行かれることが支出が増える一因として説明している)〜
収入が増えたからそろそろ……と若い二人は夢に見た我が家を買う。家を手に入れると税の負担が増える。固定資産税だ。それから二人は新しい車を買い、家具を買い、新居に合わせて電化製品を新しくする。そして、ある日突然、住宅ローンやクレジットの支払いで負債の欄がいっぱいなのに気づく。
こうなると二人はもう「ラットレース」の罠にはまったも同然だ。子どもが一人生まれる。二人はさらに一生懸命働く。前と同じプロセスが繰り返される。

筆者はこの例に出てくるような夫婦が、金銭的な情報を読み解く力が不足しており、資産と負債の違いをわかっていないからお金に困ることになると言う。

家は「資産」か「負債」かという問題について、著者は「負債」だと言う。家を持つことに関しては、以下の点をよく頭に入れておくべきだと主張している。

  1. ほとんどの人は完全には自分のものにならない家のためにお金を払い続ける。つまり、ほとんどの人は何年かおきに新しい家に買い換えるが、そのたびに前の家の支払いはすませても、たいていは前より大きな家を買うために新たな三十年ローンを組むことになる。
  2. たとえ住宅ローンの返済の利子分を所得税の対象の所得から控除することができたとしても、そのほかの経費は税金を取られたあとの収入から支払わなければならない。たとえローンを払い終わったところで、その経費は変わらない。
  3. 固定資産税ものしかかってくる。
  4. 家の価値は下がり得る。
  5. 家にすべてのお金をつぎ込んでしまったら、前にも増して一生懸命働くしか選択肢がなくなる。家にかかるお金が支出としてどんどん出て行く一方で、資産の欄には何も貯まらないからだ。これにより、大切なチャンスが失われるという損失を被る。

最後の「チャンス喪失の損失」についてより詳しく言及されている。

  1. 時間の喪失。本当の資産に投資していれば、ローンをせっせと返しているあいだにその価値が上がったかもしれない。
  2. 投資にまわせるはずの資本が減る。家を買ったことで高額の維持費が発生する。
  3. 教育を受ける機会の喪失。ふつう人は持ち家や貯金、年金などを資産として考え、それをあてにする。そして投資に回すお金はないからと言って、投資には手を出そうとしない。これは投資の経験を逃していることになる。このようにしてたいていの人は、「目の肥えた投資家」になるチャンスを失う。一番割のいい投資というのは、こういった「目の肥えた投資家」にまず最初に売られ、次にこの投資家が一般の「安全なものだけを買う投資家」に売りさばいて利益をものにする。
第三の教え:自分のビジネスを持つ

著者の考える本当の資産として以下のものが挙げられている。

  • 自分がその場にいなくても収益を生み出すビジネス。著者は会社を所有しているが、実際の運営は他人がやっている。曰く、もし自分がその場にいて働かなければならないなら、それはビジネスではなく、自分の「仕事」だ。
  • 債券
  • 投資信託
  • 収入を生む不動産
  • 手形、借用証書
  • 音楽、書籍などの著作権特許権
  • その他、価値のあるもの、収入を生み出すもの、市場価値のある物品など

著者は言う、本当にやる気のある人でない限り、会社を興すことはすすめない。それよりも、今の仕事を続けながら、その一方で自分のビジネスを持つことを考えるべきだ、と。「自分のビジネスを持つ」とは、本当の意味での資産を増やし、それを維持することを意味している。一度手にしたお金は二度と出て行かないようにする。貸借対照表の資産欄に入ってきたお金は、自分のために働いてくれる労働者だと考えるとよい。

第四の教え:会社を作って節税する

お金に関する知識は次の4つの専門的分野の知識から成り立つと著者は説明する。

  • 会計力
    • 貸借対照表損益計算書といった財務諸表を読んで理解できる能力。この能力を持てばどんな種類のビジネスにおいても強みと弱みを見極められるという。
  • 投資力
    • お金がお金を作る科学。投資における戦略と方式。
  • 市場の理解力
    • 需要と供給の科学。市場の理解には、市場の「人為的」側面を知ることが重要という。人間の感情によって左右される側面だ。クリスマス商戦で突然セサミストリートのエルモ人形が爆発的人気を博したりするのが一例だ。そして基本的な投資のセンス、つまり投資に関する経済的感覚が必要。時々刻々と変化する市場の動向を見て、いま投資するのが適切か否かを判断できる「感覚」が必要。
  • 法律力
    • 会計、投資、市場に関する専門知識のまわりを「会社」という殻で包むと、資産を大幅に増やすのに役立つ。会社を持つことによって得られる税の優遇措置や、保護といったことに関する知識を持っている人間は、会社に勤めていたり、小さな事業を個人で営む人たちと比べて早く金持ちになれる。その違いは歩くのと飛ぶのとの違いほどもある。

会社を持つと、以下の様に法律を利用することができる。

  • 有利な税金対策
    • 税金に関する専門知識は多岐にわたっており興味深いが、資産やビジネスの規模がかなり大きい場合を除いて、すべてを知る必要はない。重要なのは、「会社に雇われている人は、稼いだ収入から税金が引かれ、残ったお金で生活をやりくりする。」一方で「会社は収入を得たら、そこから経費を差し引き、残ったお金に税金が課される」という違いを最大限利用すること。具体例で言えば、会社を作ると、休暇旅行のついでにハワイで重役会議をすれば、その費用は経費にできるし、会社の車の購入代金、保険料、修理代も会社の経費にできる。スポーツクラブの会員権だって会社の経費にすることが可能だし、接待や打ち合わせを兼ねてレストランで食事をした場合は会社の経費にできる。ほかにも経費として落とせる支出はたくさんあるが、そのどれも合法的に、税金を支払う前の収入から落とすことができる。
  • 訴訟から自分を守る
    • 債権者から資産を守るために、会社や信託といった仕組みを利用して財産の大部分をうまく隠すことができる。合法的な保護によって何重にも守られることになる。訴訟を起こされても、「たしかに金持ちだが実際には何も持っていない」ということになるらしい。

まとめると以下のようになる。

  • 会社を持っている金持ちは
    1. 稼ぐ
    2. お金を使う
    3. 税金を払う
  • 会社のために働いている人々は
    1. 稼ぐ
    2. 税金を払う
    3. お金を使う
第五の教え:金持ちはお金を作り出す

金持ち父さんは言う「中流以下の人はお金のために働き、金持ちは自分のためにお金を働かせる。お金が実際に存在すると思う気持ちが強ければ強いほど、お金のために一生懸命に働く。お金は実際には存在しないものだとわかれば、早く金持ちになれる。」、「(お金とは)『これがお金だ』ってみんなが同意して決めたものだ。」。お金が実際に動き回るのではなく、「同意」が動き回った結果、お金が作られる。ここでは投資でお金をつくることはロケット工学のような複雑なものではないということが著者の実体験を織り交ぜつつ述べられている。「同意」を動かすことで如何にお金を作り出すかが述べられている。ここに書かれている方法がサブプライム問題後の現在で通用するかどうかは疑問だが、金持ち父さんの言葉に集約されている本質的なメッセージは今なお重要であるように思われる。

第六の教え:お金のためではなく学ぶために働く

ここでは専門知識と広く浅い知識を対比させている。著者の考え方は、専門をきわめるよりも広く学ぶべきということだ。専門を究めることは強みになるが、一つのものしか学ばないという姿勢は多分にリスキーであるとの見解だ。これはもっともだと思う。そして学ぶために働くことを推奨している。それでも専門一筋で行きたいならば、労働組合が強力な会社に勤めるべきだという。特定の産業に特化した知識はその産業の終焉とともに価値を失うからだ。そのときに労働組合に入っていれば身を守れるかもしれない。

貧乏父さんは、自分の能力が上がれば上がるほど一生懸命働いた。また、専門性を高めれば高めるほど深く罠にはまって行った。その結果、給料は上がったが、選択の余地は狭まった。貧乏父さんは州政府の仕事から閉め出されてからまもなく、職業に関して自分がどんなに弱い立場にいるか、その実情に気づいた。けがや年をとったために急に試合に出られなくなったプロスポーツ選手のようなものだ。高収入の地位は失われ、頼りになるのはごく限られた技術だけだ。その後、貧乏父さんは労働組合にずいぶん肩入れするようになったとのことだ。組合に入っていればどれほど助かったかということに気がついたのだ。

一方、金持ち父さんは浅く広く知識を増やすようにいつも言っていた。また、自分よりも頭のいい人間と仕事をし、そういう人間を集めて一つのチームとして働かせるようにとも教えた。

著者は、「いくら稼げるか」ではなく「何を学べるか」で仕事を探すべきだと主張している。ビジネスの実務の全体的な知識を得たり、それぞれの部や課がどのような相互関係を持っているかを学ぶことの重要性を説いている。稼ぐよりも学ぶことに重点をおいて仕事を探した方が、短期的には収入が減るかもしれないが、長期的に見ればたくさんのおまけがついてくる、とのことだ。

実践の書

お金の流れは読めるようになったのに資産を増やすことができないという人にとって、大きな障害となるものとして次の五つが挙げられている。

  • 恐怖心
  • 臆病風
  • 怠け心
  • 悪い習慣
  • 傲慢さ

お金を失うことに対する恐怖心を克服することが第一に重要。敗北によってやる気を奮い立たせるものが勝者になり、敗北に寄よって打ち負かされてしまうものが敗者となる。負ける人は失敗を避けようとして負ける。だが実際は、失敗は敗者を勝者へと変える。

また、雑音に耳を傾けて臆病になってしまわないことが重要。頼みもしないのにこちらの欠点や弱点、その方法でうまくいかない理由を指摘してくれてしまう友人や家族がいるというのもやっかいだ。「なんでそんなことができるだなんて思うんだい?」、「そんなにうまい話がだったらみんながそうしているはずじゃないか」、「そんなことしたってうまくいきっこない。きみには何もわかっていないよ。」、身近な人や、マスコミ等の騒音に惑わされないでいるための勇気を持つことが重要だ。金持ち父さんは言う。「臆病な人間は決して勝者にはなれない。根拠のない疑いや恐怖が臆病な人間を作る。臆病な人間は批判をし、勝利を収める人間は分析をする。」

忙しい人が一番の怠け者、というケースもあり得る。著者は言う。

近頃私がよく出会うのは、忙しすぎて自分の財産に注意を払うことを怠けている人たちだ。自分の健康に注意を払うことを忘れている人もいる。どちらの場合も理由は同じ ---- 忙しいからだ。こういう人たちがいつまでも忙しい状態を続けるのは、自分が真正面から立ち向かわなくてはならない問題を避けるためにほかならない。
〜中略〜
心では「本来はこうあるべきなのに」とわかっているのに、それを避けている自分に気づいたときにはいつも、「それをしたらどんなプラスがあるだろう?」と自問しよう。そして少し欲張りになることだ。それこそが怠け心につける最良の薬なのだから。
〜中略〜
金持ち父さんは「欲張ることよりも、それに関して罪の意識を持つことの方がよくない」とよく言っていた。その理由は、罪の意識が、欲望から生み出される健全な精神を骨抜きにしてしまうからだ。個人的には私は、ルーズベルト大統領夫人で「世界人権宣言」の起草に力をつくしたエリノア・ルーズベルトの、次のような言葉が一番要点をついているように思う。それは「自分の心に聞いて『正しい』と思うことをやることだ。なぜなら、いずれにせよ批難を受けることになるのだから。たとえ何をしようと、また何もしなくても、文句を言われる」というものだ。

私たちがみなよりよい生活を求めているからこそ世界は進歩する。

自分への支払いを最優先にすることが重要。自分への投資というのは「生活が要求する期限を切られているが故に重要そうに映る何か」に対して、経済的・時間的にあとまわしにされる傾向がある。そうではなくて、自分への投資を最優先にして、経済的・時間的な余裕がない状態がもたらすプレッシャーをバネにして自分を強くすることが重要。「生活が要求する期限を切られているが故に重要そうに映る何か」をどうにか頭を使って対処する。自分に対する支払いを先にすれば、お金に関して自分が強くなる。頭も鍛えられ、実際にお金も儲かる。一方自分に対する支払いを最後にすると自分が弱くなる。会社の上役や、税金や借金の取り立て人、家主なんかに一生追いかけ回されることになる。それもこれも、お金に関してよい習慣を身につけていないというだけの理由による。

傲慢にならないことも重要。傲慢さはエゴに無知が加わったもの。金持ち父さんの言葉。「知識が私にお金を儲けさせてくれる。無知はお金を失わせる。傲慢さが頭をもたげてくると、いつも私は損をした。なぜなら、傲慢な気持ちでいるときは、自分が知らないでいることは大して重要じゃないと本気で信じているからだ」

著者が考える、スタートを切るための十のステップを挙げている。

  1. 強い目的意識を持つ --- 精神の力
    • これは当たり前。「やりたいことリスト」と「やりたくないことリスト」を作ることが強い目的意識の醸成に効果があるのではと提案している。
  2. 毎日自分で道を選ぶ --- 選択する力
    • 長い目で見て、着実に自分を成長させられる教育を選択して、自分に投資すべきと述べている。
  3. 友人を慎重に選ぶ --- 強力の力
    • 著者は言う、友人のなかでもお金にヒイヒイ言っている人たちは、お金やビジネス、投資といったことについて話すのがきらいだ。そういった話は「あさましい」とか「知的でない」と思っているのだ、と。そういう友人からも反面教師的に学び、金持ちの友達からも学ぶ。著者曰く、金持ちの友人に共通することは、お金に興味があって、それについて話すのが好きなので、同じくお金に興味を持っている著者も彼らから学ぶところが多いとのこと。また、市場の波を読むのに役立つ情報をくれる友人も当然重宝する。
  4. 新しいやり方を次々と仕入れる --- 速習の力
    • セミナーに出るなどして、知識を得て、そして実行する。これを繰り返すことで、早く学ぶことが重要。
  5. 自分に対する支払いをまずすませる --- 自制の力
    • これに関しては前述の通り。付け加えると、借金をしないこと。資産を作る前に、大きな家やいい車を買わない。そして、収入が少ないときでも貯蓄や投資用の資産を取り崩したりせずに、外からのプレッシャーが大きくなるにまかせ、そのプレッシャーを利用して自分を高めるべき。
  6. ブローカーにたっぷり払う --- 忠告の力
    • いいブローカーは良質は情報を提供してくれお金を儲けさせてくれるだけではなく、自分の時間も節約してくれる。ただしいいブローカーを見つけるのは簡単なことではない。著者はブローカーを雇う際には、まず面接をして、相手が個人的にどれくらい不動産あるいは株を持っていて、税金を何%払っているかを聞くそうだ。
  7. もとはかならず取り戻す --- ただでなにかを手に入れる力
    • 保有する株が値上がりした場合などは投入した金額分を売ってしまい、もとを取り戻しておくのもひとつの手。賢い投資家になるためには、元手を回収したあとにただで手に入る資産に注意を払う必要がある。
  8. ぜいたく品は資産に買わせる --- 焦点を絞ることの力
    • 例えばポルシェが欲しいと思ったら、一番簡単な方法は借金をしてしまうこと。このように負債の欄に焦点をしぼるのではなく、資産の欄に焦点をしぼることが重要。いま楽に見える道があとになって険しくなり、険しく見える道があとになって楽な道になることがよくある。
  9. ヒーローを持つ --- 神話の力
    • ヒーローは我々に刺激を与えてくれるばかりではなく、物事を簡単に見せてくれる。投資をひどくむずかしいことのように考え、人にもそのように言う人が多すぎる。そういう人に近づかず、投資がやさしく見えるようにしてくれるヒーローをさがすことが大切。
  10. 教えることで得る --- 与えることの力
    • 何かが足りないとか何かが必要だと感じたときには、まず、それを人に与える。そうすれば後になって、二倍にも三倍にもなって返ってくる。ある男がいる。その男は凍てつく寒さの夜、両手いっぱいの薪を抱えてストーブの前に座っている。そしてストーブに向かって叫ぶ。「おれを温めてくれたら、薪をくべてやるよ!」。


図書館から借りてきた数冊の本を読んだだけだが、多少は勉強できた。本書の実践の書にある通り、まずははじめてみようと思う。本書で学んだことがこの先指針となり大いに助けとなることと思う。良書だった。

金儲け哲学[読書][money]

糸山英太郎氏の「金儲け哲学」を読んだ。非常にためになった。

著者の糸山英太郎氏の経歴はWikipediaをみていただければわかるが(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B3%B8%E5%B1%B1%E8%8B%B1%E5%A4%AA%E9%83%8E)、清濁併せ呑んだ凄みのある人物だ。

ウィキペディアの経歴だけ見ると、かなりのワルであるように感じてしまうが、本書を読むと、氏の天真爛漫さに端を発する人としての魅力や、軸のぶれない哲学を持っている強さもわかる。一昔前のワルの大物政治家、という感じだ。偉業を為すにはパワーが必要だし、そのパワーが時にはけ口を間違えることもあろうと思う。だが、そういうパワーを持つ人に、独特の魅力が備わっているのも常だ。本書を読んで特に感銘を受けたのは氏がいつも頭と体を使っているということ。本書には豊富な氏の実体験が書かれており、そこに頭と体を常に使っていることが現れている。以下に一部を紹介する。

中古外車セールスの実体験

雇われの身で中古外車セールスをしていたときに、訪問先の受付などで名刺を見せたとたんに、受付嬢や秘書を通して居留守を使われ、門前払いを食わされたこともしばしばあったという。氏は、名刺に肩書きが印刷されており、自分がセールスマンであることがわかってしまうことが問題だと考えた。そして「いっそ肩書きなど抜いてしまえ」ということで、表側に名前、裏側に会社の住所と電話番号だけを記した名刺を用意した。果たして、訪問先で、「糸山英太郎と申します。ごぶさたしていますが、社長さんはいらっしゃいますか?」と名乗ると、意表をつく名刺が功を奏して、てっきり社長の知り合いと思い込みすんなりと社長に取り次いでもらえたとのこと。当然社長は氏の顔など知らないわけだが、氏は社長と旧知の知り合い然とした大芝居を打つと、社長もなかなか「どなた様でしたっけ?」とは聞けない。10分ほど雑談した後、正体を明かすと、10人のうち5人はカンカンに怒り、あとの5人は「そこまでやるか」と呆れながらも商談に付き合ってくれたという。そして氏は一年間で77台の車を売りまくるという当時の業界新記録を樹立した。

プール経営の実体験

また、新日本観光に勤めているときに、経営しているプールの業績が思わしくなく、糸山氏が担当することになった。経営しているプールは京阪電鉄牧野駅前にオープンしたので、立地もよいし、規模も大きく作りも豪勢だったので、一度足を運べば顧客はプールのよさを実感するように思われた。しかし、ひとつ手前の駅である枚方駅に京阪電鉄直営のプールがあり、車内アナウンスで「次は枚方〜、枚方プール前」と流すので集客に苦戦していた。氏は京阪電鉄に車内吊り広告を出させてもらえるよう交渉したが、はねつけられた。そこで、枚方駅で毎日曜日、プールの無料入場券をばらまき、プールの集客数を飛躍的に向上させた。枚方プールの集客数は急落し、案の定、電鉄側から休戦申し入れが氏のもとにあった。氏は巧みな交渉術、というよりは基本に忠実な交渉術を発揮した。最初にこちらの想定する妥協点よりも非常に良い条件を提示するというものだ。「車内アナウンスの『プール前』というやつ、あれをやめてくれますか?」という訳だ。もとより敵が呑むはずもないとわかった上での無茶な要求で先制パンチをお見舞いする。電鉄側を仰天させておいて、「車内アナウンスをやめてくれないなら、無料入場券もやめない」とごねたのだ。結局電鉄側が「車内の吊り広告は認めますから、それで勘弁してくださいよ」と擦り寄ってきたそうな。最初に大きく出た分、相手にしてみれば実は破格の損になる条件が格段によく思える、という人間心理を突いた作戦が功を奏したのだ。

体験談のまとめ

本書には上記の様な実例がふんだんに紹介されており、頭と体を使うことがいかに重要かを認識させてくれる。名刺の件などは、なかなか解決方法が面白い。論理的に考えれば確かに氏の発想に行き着くかもしれないが、それを実行するところがすごい。大変な胆力の持ち主だと感心しきり。頭で考えるということは実は難しい。先入観に捕われて脳死状態になってしまいがちなのだ。セールスなんて嫌われて当然とあきらめた時点で脳死状態に陥る。頭を働かし続けることで氏は難局を打破して行く。考え続け、その考えを実行することの効果の大きさと、そして自分ができるだろうかと自問することにより、その難しさの両方を感じることができた。

糸山英太郎氏の哲学と投資方法

また、本書には糸山氏の哲学や投資方法をに関する記述も多い。特に印象に残ったものや有用と思ったものを以下にメモしておく。

  • 投資する金の量が多ければ多いほど、同時にそれを寝かせておく時間が長ければ長いほど、儲かる率は高い。投資は『投資資金×年月』がモノを言う世界。

「一度に大量の資金を投入して、短い期間でたくさん儲けよう」なんて欲の皮を突っ張らせても、絶対に儲からない。「値が安いときに買い足す」方式で、投資する資金量を徐々に増やしながら、時間をかけて取り組めば、株は儲かることを学んだのである。

私のカネはどんなリスクにさらされようと、何年も寝かしておくことができる、そういう余裕のあるカネなのだ。
よく言われるように、株は余裕資金でやらないと勝てないというのは本当のことだ。なけなしのカネをはたいてやるものではない。
機関投資家の間では、「ロスカットの管理が最も重要である」というのが常識らしいが、ちょっとソンしたら売って決済するなんて方法は、私に言わせると時間に負けて早々に白旗を振っているようなもの。彼らには私のように、無限に寝かせておける時間が与えられていないということを、つくづくお気の毒に思う。
株価が下がってもナンピンをかけて勝負し、利益が出るまで売らない、この姿勢を貫く限り、私が株で負けることはありえないのである。

近藤氏は売りを得意としていた。「この株は高すぎる」と判断すると、その株の空売りを始める。すると株価はどんどん下がる。こうして下がり切ったところで買い戻して決済をし、その差額で儲けるのだ。なかなか値を下げない株にもガンガン売り浴びせて、強引に株価を暴落させるやり方だ。
いまでも私は、空売りする投資家が好きではない。なぜなら、「他人にソンをさせて、自分だけが儲ける」手法だからだ。株は、自分が投資する企業が成長することを、その結果として値が上がることを期待して買うものなのに、値下がりを当てにするところも気に入らない。企業が落ちぶれるのを心待ちにしているのと同じではないか。
「金持ちならば、他人に儲けさせて、自分も儲けるのがスジではないか」と私は思い、徹底抗戦に出た。近藤紡から出る大量の売り物と、その尻馬に乗って売りに出た投機家の中山製鋼株を、必死になって買いまくったのである。
近藤紡から「二百万株近い信用売りの分だけ、カネを用意するから応じてくれ」と手打ちを求めてきたのは、仕手戦が始まって半年後のことである。
〜中略〜
私がこの仕手戦で学んだことは、空売りの恐ろしさである。近藤氏のそれを目の当たりにしなかったら、私はいずれ空売りに手を出し、手痛い目に遭っていたかもしれない。これを教訓にして、私は今日までずっと、どんな場合も空売りしない方針を貫いている。

  • 愛国心で株を買う
    • 氏は政治家を務めたこともあり、その経験から愛国心を強く持つに至ったと言う。日本の株が値を下げた大きな原因は、外国人投機筋が金融関連株をはじめ、日本航空新日鐵三菱重工といった日本の代表的な企業の株を猛烈な勢いで売ったことにある。糸山氏はなんとか助けたい一心で、必死で買い支えているとのことだ。ナショナリズムが投資の大きなモチベーションになっている。氏曰く、「日本を愛し、将来を本気で心配するなら、いまこそ株を買うべきだ。戦後の焼け野原から立ち上がって、大衆が一丸となって驚異的な経済発展に力を発揮したように、みんなで株を買って"日本の価値"を上げようではないか。」。株価が千円下がると、日本の財政は二十五兆円減ると言われているらしい。株価を上げれば、国の為になることは間違いない。
  • 逆張りをする。買い増しをする。
    • 百人中九十九人の投資家が、「下がるぞ、下がるぞ!」と、真っ青になって慌てて株を売っているときに、淡々と株を買う。逆に、百人中九十九人の投資家が、「上がるぞ、上がるぞ!」と、興奮で顔面を紅潮させて買っているときに、淡々と株を売る。「安いときに買って、高いときに売る」という株で儲ける基本に忠実である。それが人の行動の逆を行くことになるらしい。
    • 株に投資する資金は一度に全額を使わずに、三分の一から二分の一の金額を使って投資するとのこと。値下がりしたときにナンピンをかける準備をしておくのだ(ナンピン:買った株が値下がりしたときに、それをさらに買い増して、買いの平均コストを下げること)。

たとえば、三菱重工株を四百八十円で買ったとすると、三百を割ったところでナンピンをかけて三分の一くらい買い足せば、買値平均が四百円くらいになる。さらに下げれば、残りの三分の一でまたナンピンをかけて…というのを繰り返して、買い値平均価格をどんどん下げていけばいい。

  • 1.5〜2割抜けたら、ためらわずに売る
    • バブル時代は、長期投資に徹して含み益を増やすのが株最大のうまみだった。現代は経済が低迷しており、同じ銘柄が二〜三年にわたって買い続けられ、株価が三〜五倍に値上がりするケースなど、ほとんどない。割安な株を買うことはもちろん、その銘柄が1.5〜2割抜けたら、何も考えずにさっさと利食って、利益を確保する。これを五回繰り返せば、資産は1.5〜2倍になる。氏の場合は値動きが激しいNTTやソニー等の銘柄を中心に2〜2.5割抜けたところで利食うスタイルだそうな。あらかじめ、買い値と売り値の計画を立てて、その通りに進めなければ儲からない。この手法で投資する場合は、銘柄をしぼることが重要。ひとつの銘柄を追いかけているほうが、値動きの特徴を掴みやすいし、情報収集も楽。売買を繰り返すうちに、自然とベストな売買のタイミングを覚えられる。ちょっとした情報をつかむたびに趣旨替えをして別の株に乗り換える人が多いようだが、儲からないばかりか手数料貧乏になるとのことだ。
  • 株価上下動はあっても国際優良株しか触らない
    • 「絶対に潰れない」確証が重要。潰れたら日本が困るという会社を選ぶ。NTT、JR、東京電力東京ガス等の公共事業をやっている会社。ニューヨークにも上場している日本の会社は潰すと日本の信用がガタ落ちになるから、潰す訳にはいかない。常に世間の目に晒されるから、隠し事もしにくいし、業界ナンバーワンのプライドもあり、立派に会社を運営しなければならない使命を担わされている。

いくら株価が安いと言っても、値が上がらない株を掴んでは元も子もない。くれぐれも、百円未満の額面割れを起こしていて、しかも経営改善に向けての会社の努力が見られない銘柄、何か悪いことをしたために経営が極端に落ち込んでいる銘柄は避けた方がいい。株価を戻す力はない。

私は誰もが知っている優良企業の銘柄しか興味はない。たとえ、私がその会社を知らないだけで、世間一般では立派な会社とされていたとしても、また経営者の評価が高く株価がどんどん上昇しているとしても、自分が見たことも聞いたこともない会社には見向きもしない。
そもそも、自分が知らない会社に「成長してほしい」という夢を託すことなど、できないではないか。
〜中略〜
「育ててあげよう」という愛情があれば、ソンをしても諦めがつくというもの。逆に、儲かれば「育ててあげたんだ。利益を受け取る権利がある」となるから、「株で儲けたカネはあぶく銭だ」といった自嘲的な気分に陥ることもない。

その他メモ

  • 企業が合併する場合は安い方の株を買っておけば上がると考えられる。
  • ETFという日経平均株価に連動して動く投資信託の購入はおすすめらしい。氏も日経平均が一万円切ったときにはもちろん買ったらしい。値動きもそれなりに激し

金融関連書籍

最近資産運用に興味を持ち始めた。ところが、私はこれまで全くその分野に興味を持ってこなかったので、知識がほとんどない状態だ。まずは手始めにということで、図書館に赴き、数冊の本を手にした。なるべく趣向の違う本を選ぶように心がけた。

  • 知識ゼロからの金儲け(島田紳助著)
  • 金融の基本とカラクリがよ〜くわかる本(久保田博幸著)
  • 金儲け哲学(糸山英太郎著)
  • 金持ち父さん貧乏父さん(ロバート・キヨサト+シャロン・レクター著)

といった本だ。最後の二冊は別の機会に譲るとして、まずは、最初に読んだ二冊について、メモ代わりに勉強したことを以下に記す。

『知識ゼロからの金儲け(島田紳助著)』

本書は島田紳助さんの金儲けの考え方を豊富な実体験を例にとりながらおもしろおかしく記している本であり、金融の基本的な部分についても触れられている。実体験を通じて得た紳介氏の考え方も面白く、勉強になったのだが、以下には金融に関する考え方と知識を中心にメモとして記す。金融に関する紳介氏の考え方として本全体を通じて貫かれているのは以下の二点。

  • 円だけでお金を持っていることのリスクを強調している。
  • 円、外貨、株、債券等でリスクを分散させるべし。

以下に本書に書いてある金融に関する基礎知識のうち覚えておきたいと思った箇所をまとめる。

金利と株価の関係」

公定歩合があがれば、銀行が企業に貸し出す金利も上がる。企業は資金を調達しづらくなり、企業活動が押さえられ、景気も冷える。故に一般的には金利が上がれば株価は下がる。逆も基本的には真で、「金利が下がれば株価は上がる」。ただし、1991年から1995年にかけて日銀は公定歩合を9回下げたのにもかかわらず、景気は上昇せず、株価は低迷を続けた。景気がピークにあるときは、「金利が上がれば株価は下がる」という関係があるが、景気が底を抜け出すときには「金利が上がって株価も上がる」という動きが見られるらしい。両者が比較的早く影響し合う場合と、何年もの時間差がある場合もある。

「資金は高い金利を求める」

たとえば円金利が上がって、ドル金利が下がった場合、金利の下がるドルが売られ、金利の上がる円が買われる結果、円高となる場合が多い。

円高ドル安と株価の関係」

円高が進むと日本の輸出企業はダメージを受ける。該当企業の株が売られた結果、株価が下がる。

国債の大量発行と金利、為替、株価の関係」

国債が大量発行されるとだぶついて債券の流通価格が下がる。流通価格が下がれば利回りの上昇となる。

たとえば券面額100万円で券面利率5%の10年物の利付国債を券面通り100万円で購入。そのまま持っていれば年5万円の儲けで利回りは5%。これが国債がだぶついた結果、95万円でしか売れなかったとする。買った側からすると、一年あたりの儲けは利札(債券の利子)の5万円と価格差5万円割る10年で5000円で、合計5万5000円。これを95万円で割って利回りを算出すると、約5.8%。すなわち債券において価格の下落は利回りの上昇につながる。

その結果、国債は投資家にとって魅力のある金融商品となり、株が売られて国債が買われる。また、海外からも買われると円買いとなり、円高となる。さらに、10年物の長期国債は指標銘柄とされているため、利回りの上昇は銀行の長期貸出し金利の上昇を誘う。上記の通り、円高金利上昇は株の下落を招き、景気の悪化を呼ぶ。

『最新金融の基本とカラクリがよ〜くわかる本(久保田博幸)』

感想としては「用語の定義が端的でない」点や「関連用語が分散して書かれており読みづらい」点や「用語の意味が十分に説明されていないものが散見される」点が気になる場合もあったが、金融に関するおおまかな知識を仕入れることができ、有意義ではあった。ただ、図書館にあったという理由で手に取ってはみたものの、きっともっと良書が世にはたくさんあることだろうとも思う。

紙幣と通貨について
日銀の3つの役割
  • 発券銀行
    • 戦費調達のため政府が紙幣を乱発したことでインフレが引き起こされたという歴史的経緯がある。
    • お金を発行・管理するところ政府とは別の組織に移すことで、お金に対しての信用を強化するとともに、物価の安定を図ることを可能としている。
  • 政府の銀行
    • 政府は日銀に当座預金口座を開設しており、当該口座を通じて以下の事務を行っている。
  • 銀行の銀行
    • 民間銀行の預金を日銀の当座預金口座で預かっている。
    • 日銀から発行された現金通貨は、日本銀行から当該口座を通じて民間銀行に流れ、そして民間銀行から個人や企業に供給される。
    • 「最後の貸し手」:何らかの理由で資金繰りに問題が生じた金融機関等に対して、資金供給を行う主体が他にいない場合に、日銀が最後の貸し手となって、当該金融機関に資金の供給を行う役割も担う。
      • 貸付のうち担保の差し入れを条件とせずに実施する日銀特融がある。
日銀の金融政策
  • 公開市場操作(金融調節)
    • 日銀が市場で短期国債などを売買し、それを通じて資金の出し入れを行うことで金融の調節を図る政策。公開市場操作に伴い金融市場で取引を行うことをオペレーションと呼び、売りおよび買いによって「売りオペレーション」および「買いオペレーション」と呼ばれる。
  • 公定歩合操作
    • 公定歩合とは日銀が民間金融機関に対して貸出しを行う際に適用する基準金利を指す。2001年2月9日の金融政策決定会合において、公定歩合を0.15%に引き下げ、さらに「ロンバート型貸出」を導入し、短期国債の買い切りオペレーションを積極活用することが決められたことで、形骸化していた公定歩合に別の機能が備わった。ロンバート型貸出とは、金融機関が日銀に差し出している国債等の担保額の範囲内で、金融機関の要請があれば公定歩合金利で翌日まで資金を貸す制度。従来は金融機関への貸出しの可否は日銀が判断していたが、金融機関が要請すれば必ず担保額の範囲内で借りることができる点が異なる。信用不安などである銀行の資金調達が難しくなった際に、公定歩合で資金調達できることが保証される。したがって公定歩合が上限金利として機能する。もし短期金利公定歩合を上回れば、日銀から借りた方が利払いが少ないからである。
  • 預金準備率操作
    • 金融機関は保有している預金の残高に応じた一定の資金を日銀の当座預金に積んでおくことが義務づけられている。この比率を預金準備率という。
ゼロ金利政策量的緩和政策
  • ゼロ金利政策
  • 量的緩和政策
    • ゼロ金利政策によって金利をゼロ近辺に誘導してもまだデフレ脱却への動きを見せなかった日本経済の活性化に向けて行われた金融緩和政策で以下の特徴がある。
      • 民間金融機関が日銀の当座預金に置いている残高を、決められた額(所要準備)である6兆円程度に対して、最終的には30兆から35兆円になるように資金供給を行った。主に、銀行から国債を買い取る買いオペレーションにより実施。金融市場の資金量が多くなれば、金融機関から個人・企業への貸出しにまわる資金量も増えることになり(日銀の当座預金は利子がつかないため)、金融緩和と同じような効果が生まれる。
      • 消費者物価指数の上昇率が安定的に前年比でゼロ%以上になる」という量的緩和政策の解除条件をクリアに設定した。その結果ゼロ金利が長期間続くとの見通しによって、さらに長期の金利の低下も促された(時間軸効果)。日銀の当座預金に預金が増えればロンバート貸付による資金調達が可能になり、銀行として資金調達が楽になるので、企業への積極的な融資を誘導することができる。一方企業にしても、時間軸効果により長期金利が当面低いとの予想が立ち、設備投資等に積極投資することを誘導できる。
外国為替
  • 取引される市場の違いからインターバンク・レート(銀行間相場)とカスタマーズ・レート(対顧客相場)に分けられる。
    • インターバンク・レート : 受渡日の違いから以下のレートが存在する。
      • 直物為替相場(スポット・レート)
        • 外国為替取引での受渡、つまり通貨の交換が取引成立日の2営業日後となっている取引。直物相場はビッド・レート(買い値)とオファー・レート(売り値)の双方、つまりツー・ウェイ・クォーテーションで建て値される。
      • 先物為替相場フォワード・レート)
        • 外国為替取引での受渡、つまり通貨の交換が取引成立日の3業日以降となっている取引。先渡相場もしくは先物相場と呼ばれる。一般に、相対で取引される予約取引形式を先渡取引と呼んでおり、取引所で差金決済される予約取引形式を先物取引と呼ぶ。
    • カスタマーズ・レート : 一般の企業や個人が銀行との間で行う為替取引に適用される相場。
  • 株式会社:資本の出資者を広く一般に公募し、多額の資金を調達する仕組みを持つ会社。出資者が出資した金額の分だけ責任を負うという形式の有限責任の法人。株主権は有価証券のひとつである株式に表示され、自由に譲渡することができる。その株を購入した際には、たとえ投資した会社が倒産したとしても、その会社の債権者に対して責任を負うことはなく、あくまで株主は自分の出資した分だけの損失に止まるという制度。

従来、新株予約権は、新株引受権と呼ばれていた。しかし、この語は「新株発行の際に優先的に新株を引き受ける権利」と「会社に対して行使することにより有償で新株又は自己株式の交付を受けられる権利」の両方の意味を持っていた。そのため、平成13年商法改正時にこの概念を分離し、前者を新株引受権、後者を新株予約権と定義した。また、新株引受権は、行使をする者を限定しない概念であったが会社法制定に伴い新株引受権の行使権者は「株主」に制限され用語自体は破棄された。これにより、募集株式の発行の際に第三者が有利発行を受ける権利については名称そのものが存在しない事になった。更に、平成13年改正までの新株予約権は新株引受権付社債のように社債に附され、分離する事が不可能であったがこの改正により単独発行が認められるようになった。そのため新株予約権のみを売買することが可能となった。

  • 証券取引所:主に株式や債券の売買取引を行うための施設であり、資本主義経済における中心的な役割を果たしている。経済の発展に欠かせない資金調達と資本運用の双方が効率的に行われるようにするため、株式および債券の需給を取引所に集中させ、流動性の向上と安定した価格形成を図ることがその主な役割である。
  • 証券取引所には上場できる基準、条件によって、第一部、第二部などに分かれているほか、設立間もない新興企業向けに、証券取引所の中に条件を緩和した新しい市場が創設されている。東証マザーズ大証ヘラクレス等があたる。証券取引所で株式が 売買可能になるには株式公開をする必要がある。これをIPO(新規株式公開)という。
  • TOB(株式公開買付):
    • ある企業の株式を大量に取得したい場合に、新聞広告などを使って一定の価格で一定の期間に一定の株式を買い取ることを表明し、不特定多数の株主から一挙に株式を取得する方法。証券取引所上場企業や、未上場でも有価証券報告書の提出が義務づけられている株式会社の株を、市場外で5%以上買う場合には原則としてTOBで買い付ける必要がある。また、市場外で株式取得後の議決権が全体の1/3以上になる場合には、TOBが強制的に適用される。実施に際しては、条件の新聞への広告や、財務局への届出の手続きが必要。TOBの実施中はこの方法以外で当該株を購入することはできない。
債券
  • 債券市場は、発行市場と流通市場に分けられる。
    • 発行市場:新たに債券が発行される市場
    • 流通市場:既発債(すでに発行された債券)が売買される場所
  • 債券の中でも中心的な役割を果たしているのが国債国庫債券)である。国債は国の財政に大きく関わり、日本の金利体系の中でも、長期金利としての重要な役割も担っている。日本の長期金利の指標としては、一般に10年満期の国債の中で最も直近に入札されたもの(新発10年物国債)の利回りを指している。債券市場においては株式などのように価格ではなく、利回り(金利)を基準にして売買される。
  • 利回り:
    • 債券がもたらす年間あたりの収益債券の利回りは残存期間に応じて異なる。残存年数の異なる金利(通常は複利利回り)を線で結んでグラフにしたもの(x:残存期間, y:最終利回り)をイールドカーブと言う。
    • 債券の利回りと価格の関係は以下の式で表される。
                   償還価格 ー 債券価格
            表面利率 + ーーーーーーーーーーー
                       残存年数
    利回り(%)= ーーーーーーーーーーーーーーーーーー × 100
                   債券価格
  • 債券の中心となっている国債は、財務省による入札で発行される。この入札に参加できるのは、国債場特別参加者と呼ばれる証券会社や銀行をはじめとする様々な金融機関・機関投資家等。上記が発行市場に当たる。
  • 一方流通市場についてみると、国債は原則として発行日から取引所に上場されているが、取引所における売買は株式等に比べれば極端に少なく、業者と言われる銀行や証券会社と機関投資家の間、もしくは業者と業者の間などで直接売買されている。この直接的な取引を取引所取引と区別するために店頭取引(オーバー・ザ・カウンター)とも呼ぶ。
  • 最も期間の短い国債はFBとTBで、利息の支払い方式が「割引形式」となっている。割引形式とは、額面金額より利息相当分が割り引いて発行され、券面に表示されている額面金額で償還されることで、発行価格と額面価格との差が利息に相当するものである。ただし、当該国債の取得は金融・資本市場に通じた機関投資家に限定されており、個人での購入は不可能。
  • 国債の種類を利払いや償還額で分類すると、
    • 固定利付債
      • 半年毎に一定の利子が支払われ、償還時に額面金額が支払われる。
    • 変動利付債
      • 半年毎に支払われる利子の額が市場金利によって毎回見直される。償還時に額面金額が支払われる。
    • 物価連動際
      • 金利は固定であるが元本と利息が全国消費者物価指数に連動して増減する。そのため、元本割れになることもあり得る。物価連動国債を購入できるのは、政府および一部金融機関に限定されており、個人は購入できない。
    • 割引債
      • 途中での利払いはないが、額面を下回る額で発行され、償還時に額面金額が支払われる。かつては3年や5年のものが発行された事があるが、2002年11月以降は短期のものしかされていない。
  • 国債の種類を償還期間によって分類すると、
    • 超長期国債
      • 15年(変動利付国債)・20年(利付債)・30年(利付債)・40年(利付債)
    • 長期国債
    • 中期国債
      • 2年(利付債)・3年(利付債)・3年(割引債)・4年(利付債)・5年(利付債)・5年(割引債)・5年(個人向け国債)・6年(利付債)。4年債は2001年2月以降、6年債は2001年3月以降は5年利付債に統合されたため発行を停止した。割引債は、3年債は2002年11月に、5年債については2000年9月をもって発行を打ち切っている。
    • 短期国債
      • 6カ月(割引債)・1年(割引債)
    • 政府短期証券
      • 60日(割引債)
  • 国債以外の債券
    • 公共債:公共団体が発行する。
    • 民間債:民間の団体が発行する。
      • 社債:事業債。企業が発行する。
      • 金融債:特定の銀行(旧長信銀)や信用金庫が発行する。
    • 国債(外債):外国政府や法人が発行する。
      • 円建て外債:外国政府や法人が円表示で国内で発行する。
      • サムライ債:上記の別称。
      • 円建て外債:日本企業などが円貨表示で国外で発行する。
      • 外貨建て外債:外国政府や法人もしくは国内法人が非円貨表示で国外で発行する。
短期金融市場
  • 期間一年未満の金融取引が行われる市場で、マネーマーケットとも呼ばれる。(対して1年超の金融取引を行っている市場はキャピタルマーケット、つまり資本市場もしくは証券市場と呼ばれる)短期金融市場は、銀行等の金融機関や、一般の事業法人が短期の資金を調達・運用する場となっている。ゼロ金利政策量的緩和政策により、短期金融市場は機能不全に陥ったが、両金融政策の解除により、再び金利を形成する機能が回復してきた。
    • インターバンク市場(日銀も含め、銀行間の市場)
      • コール市場
      • 手形市場
        • 手形の売買によって短期資金の運用・調達を行う場。
    • オープン市場(一般企業、機関投資家、非居住者も取引に参加)
      • TB・FB市場
      • 債券現先市場と債券貸借市場
        • 債券現先取引は一定期間後に一定価格での反対売買を約束して行う債券の購入(売却)取引。形式上、債券売買となるが、実質的には債券を担保とする短期の資金貸借取引となる。現在、債現先取引のほとんどはTBもしくはFBが使われている。債券貸借取引(レポ取引)は現金を担保に債券を借りる取引で、債券を売買する際の「空売り」をするために生まれた。
      • CD・CP市場
        • CDは譲渡性預金証書の略で、第三者に譲渡可能な銀行の預金証書である。CPはコマーシャル・ペーパーの略で、信用力のある優良企業が割引方式で発行する無担保の約束手形(もしくは社債)である。
金融デリバティブ
  • 伝統的な金融取引である借り入れや預金、さらに債券売買、外国為替、株式売買等の相場変動に伴うリスク(価格変動リスク)を回避するために開発された金融商品
    • 先物取引
      • ある商品を将来の一定期日に、今の時点で取り決めた価格で取引する契約。事前に価格を決めるため、価格が変動する商品を売買する場合等にリスクヘッジ効果が見込める。一定の証拠金を入れるだけで売買ができ、反対売買(転売もしくは買い戻し)による差金決済によって期日以前に決済することが可能。
    • オプション取引
      • 株や債券等の目的物を一定の期日(権利行使日)に特定の価格(権利行使価格)で買い付ける、もしくは売り付ける「権利」を取引する。
        • ヨーロピアンタイプ
          • 権利行使がオプション満期時点のみに限定される
        • アメリカンタイプ
          • プション取引の開始日から取引最終日までの期間であればいつでも権利行使可能
    • スワップ取引
      • 将来にわたって発生する利息・利子を交換する。たとえば、固定金利と変動金利を交換するなど。異なる通貨の利息等を交換する通貨スワップもある。上記金融デリバティブの特徴は、少ない金額で投資ができることにある。たとえば先物では取引高の数パーセントの証拠金があれば取引できる。このため、取引高が大きくても実際に動く金額は小さくなっており、これをレバレッジ効果と言う。

仕組債は、発行者にとっては自身の調達コストがはっきりと投資家にわからないこと、投資家にとっては通常の債券では得られないキャッシュフローが得られること、販売会社にとっては販売手数料、デリバティブの提供者にとってはヘッジポジションによるトレード収益のメリットがある。

デメリットはその複雑さと、会計問題、そして流動性の低さである。

仕組債の利率もしくは償還金額(償還形態)、早期償還の条件はデリバティブの対象アセットにより変動する。対象アセットとして主要なものは、金利、為替、株式、各種指標、クレジット、コモディティー、投資信託等、基本的に市場があれば何でも可能である。当初はキャップをつけたものやステップアップ債、ステップダウン債といったキャッシュフローを組み替えただけのシンプルなものが主流であったが、デリバティブの発展と共に、最近ではTarget Redemption債(TARN)といった複雑な経路依存型オプションを組み込んだ商品が数多く見られる。

仕組債の発行者の大半は裏でスワップを組んでおり、複雑なデリバティブの提供者は外資系を含めた証券会社を中心とする金融機関である。起債の自由度が高いユーロ市場での発行が大半で、EMTNプログラムにより発行されることが多い。

個人投資家は証券会社の「売出し」(公募)による仕組債を購入することが可能だが、資金力のある富裕層や法人は、希望するキャッシュフローや投資年限、許容リスクなどに応じてオーダーメイドで発行される私募仕組債に投資することが可能である。私募の仕組債への投資単位は、取り扱う証券会社にもよるが、1,000万円程度である。完全に自由にオーダーメイドしたい場合は5,000万円から1億円以上となる。

なお、個別の仕組債の名前は通称であり、特に決まった定義はない。同じ形であっても、販売会社によって違う名前で呼ぶことがある。

最近では、預金に仕組みを持たせた「仕組預金」や、投資信託に仕組みを組み込んだ「仕組投資信託」もある。

中身が同じデリバティブであれば、その他のコストでは、仕組預金が一番安く、次が仕組債で、投資信託が一番コスト高である。ただし、個人投資家が購入するという点においては、一度にまとまった金額を設定することでスケールメリットを享受できる仕組債の売出しがコスト面では有利である。